2022.1.13

第三十七回 ぶっ飛んだ地域を創る

日本再生可能エネルギー総合研究所 北村

 2022年があけました。
 私の本来のコンサルティングという立場から見て、今年を一言で表すと、「脱炭素サバイバル時代」ということになります。化石燃料を中心としたエネルギー費の高騰も含め波乱の年が続く可能性が十分あります。

 そんな背景の中で、あえて今回のコラムは、ぶっとんだ地域というタイトルにしました。なんとなく気づいている読者もいるでしょう。この「ぶっ飛んだ」という言葉は、昨年、「球団」と結び付いて、話題となりました。新庄を監督に選んだ、ぶっ飛んだ球団=日本ハムとして、です。
 少しだけ新庄監督(ビックボス)そのものの話をさせてください。新年ですから。
 昨年10月末の日ハムの新監督の発表には、私もさすがに驚きました。ネームバリューと話題性だけで選んでよいものかと?印がいくつも頭の中を飛び交ったものです。記者会見のなんだかふざけた感じが、さらに嫌悪感に近い気持ちまで呼び起こしました。
 このコラムを書くきっかけになったのは朝日新聞のある署名記事でした。その記者は「私は憤りにも似た感情を抱いた」とまで書いています。記事では、新庄監督が、故野村監督の心からの信奉者であること、就任後の多くの言動から真摯な取り組みが期待できることを並べて、「少しだけ長い目で見守っていきたい。」との心変わりで締め括っています。これが、この記事のある意味の種明かしです。

 実は、私もこの記者と同様な道筋で、新庄ボスに期待を寄せています。
 それは、彼がTwitterにあげた次のつぶやきです(これも朝日新聞の記事の転用です)。
 「プロ野球の存在意義は、そこの街に住む人達の暮らしが少しだけ彩られたり、単調な生活を少しだけ豊かにする事に他なりません」
 おお、と私は、良い意味でびっくりしました。
 記事内の記者の反応は、「地に足のついたコメント」で、私も、上から目線でない気持ちのいい書き込みだと感動しました。
 なにより、地域に対する寄り添いと思い入れがじわじわと伝わってきます。最近のプロ野球は、昔、テレビで応援していた頃とはかなり変化を遂げています。地上波のゴールデンタイムの放送がほとんどなくなりましたが、単純に人気がなくなってきたということではありません。確かに全国放送の視聴率は落ちたものの、その数字に反比例して、球場では地元ファンの盛り上がりが年々増し続けていると聞きます。
 つまり、もっと身近で強い親近感を持つ存在に変貌しているのです。新庄ボスのコメントは、まさにその重要なポイントをついているからこそ、心に響くのだと思います。

 私の言いたいことはおわかりでしょう。
 地域新電力の役割にも通じるとピンと来たのです。地域新電力はその地域性を生かした、地域の人にこそ愛される存在にならなければ意味がないとまで言っても言い過ぎとは思いません。2016年からスタートした小売電気事業者の登録は6年間で、新たに700を優に超える新電力を生み出しました。しかし、コラムで繰り返しているように、全国の需要をターゲットにした新電力と限定された地域を相手にする地域新電力は、根本から違うものだと思います。
 新庄ボスが書いた「そこの街に住む人達の暮らしが少しだけ彩られたり、単調な生活を少しだけ豊かにする事に他なりません」という言葉は、プロ野球に限った存在意義ではないでしょう。そのまま、地域新電力に当てはめてもぴったりするものですね。
 地域新電力は、決してエンターテインメントではありませんが、最終的な目的が、地域の生活をよりよくすることと考えれば、共通しています。
 もうひとつ、地域新電力には、地域の人たちの暮らしを根本から改善する力はないでしょう。少しだけでいいと考えましょう。それは、小さいかもしれませんが、ひょっとすると重要な第一歩になる可能性があります。
 少しだけ豊かにすること、そこから新しいまちが生まれることを期待して、今年最初のコラムを締めたいと思います。そして、どうせなら、ぶっ飛んだ地域を創りたいものです。

以上

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