2021.9.15

第三十回 公共施設の太陽光パネル設置から始めよう

日本再生可能エネルギー総合研究所 北村

 このコラムの新しい回を書くとき、いつも過去のコラムを振り返って読み直します。もちろん、同じことを書いてしまわないための注意もありますが、何か抜けていること、伝えてないことがないかのチェックでもあります。
 最近のものを見ると、脱炭素はなぜ必要か、それがどう地域活性化につながるかといったものが多いようです。読者の立場はいろいろあるので一概には言えませんが、「ではどうすればよいのか」という疑問が起きてきそうな気がしてなりません。ということで、今回は、地域で具体的に何をすればよいのか、という話をしましょう。

 “地域主導の脱炭素”は、もはやお題目のように政府や環境省など各省庁のロードマップに登場するようになりました。2030年の中間目標達成には太陽光発電の拡充が必須だということでも一致をしています。
 過去に書いたように、これからの地域の太陽光発電は自家消費とPPA(第三者所有型)が主流となります。2030年までに自治体の所有する施設や土地などの半分に設置することを目指しています。2040年には100%が目標です。これはほぼ義務といってよいでしょう。
 地域の新電力は、ここから始めたらどうでしょうか。

 環境省の試算によると、自治体関連の太陽光発電拡充は、前記の方針実現で2030年までに6GWの設置増となるということです。莫大な量です。また、民間での増量は10GWと算定されています。
 これを基本的にはPPAで行うと地域脱炭素ロードマップ“創意工夫”の一番に掲げられています。ご存じのように、PPAで自家消費を実現するには、夜などの不足分を需要家(ここではまず自治体)供給することが必要です。地域新電力はこの適役です。
 もちろんこの他に、このパネルを設置したり、メンテナンスしたり、全体の資金を融通したりとPPAに必要な役割はたくさんあります。これらの役割を基本的には地元で賄いましょうというのが、地域脱炭素ロードマップの道筋であり、改正温対法も同様に示しています。
 パネルを設置するのは地域の施工業者、メンテナンスをやる業者さんも地域にいます。また、資金は地域の金融が供給可能です。不足電源を供給する地域新電力と自家消費するのは自治体などの地元です。だれが施設を所有するかは、いろいろと選べます。施工業者が保有したり、地域新電力が保有したりといった実例はすでに各地にあります。地域新電力の資本構成の中に施工業者や金融が含まれているケースも多く、PPA全体の取りまとめ役、プロデューサー役を地域新電力が行うとすんなり進むかもしれません。
 パネルは外から買ってくるしかありませんが、プレーヤーは基本的に地域でそろいます。まさに、ロードマップが掲げる地域での体制が完成します。地域内の経済循環と活性化が見えてきますね。
 
 ここまで書いてもまだ観念的にみえるかもしれません。
 そこで、私が関わっているある地方の例をお教えしましょう。それは、福岡県のお茶どころ八女市での取り組みです。
 太陽光発電の地域循環型PPAシステムで、LED’Sという名がついています。Local Energy Direct Supply(地域でのエネルギー直接供給)の略です。地元の太陽光パネル設置業者の㈱アズマと地域新電力のやめエネルギー㈱が1年ほど前に始めました。自治体対象というより地域の事業所向きで、10kW程度のパネルを屋根に載せて、余剰はFIT売電するモデルです。緊急時に使える蓄電池もセットです。
 パネルの所有はアズマで、施工とメンテナンスを担当します。やめエネルギーは基本的に電力供給の契約を行い、金融も地元です。すでに100を超える場所での契約を終え、次々と施工を行い自家消費が進められています。
 ユニークなのは蓄電池の利用法です。災害などの緊急時には、近隣の住民の携帯電話の充電に開放することが条件なのです。地元の新聞やテレビもこぞって取り上げています。北部九州ではかなり有名になってきました。昨年度の環境省の「グッドイフアワード」にも選ばれています。
 LED’Sの取り組みは、全国にも広がろうとしています。「LED’S推進グループ」がこの7月に発足し、すでに30ほどの各地の企業や団体が参加しています。

 脱炭素という地球を守るムーブメントが後押しする形で、再生エネと地域活性化が結び付き始めました。いま、地域からスタートするチャンスが地元にはあふれています。「あれもない」、「これもない」というネガティブな考えは幻想です。地域には再生エネ資源を始め、いろいろな力、仲間が目白押しです。
 地元の太陽光発電拡充を、地域のPPAから手を付けてみませんか。

以上

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