2021.5.26

第二十二回 脱炭素に関わるリスク

日本再生可能エネルギー総合研究所 北村

 繰り返して書いているように、トレンドとなっている脱炭素は、再生エネとも地域ともSDGsの実現とも密接に関係しています。それぞれ切っても切れないつながりなのです。
 そこで、今回は脱炭素に関わるリスクについてお話ししたいと思います。

 脱炭素に関連のリスクには大きく分けて2つあります。一つは、脱炭素に取り組まないことで発生するリスクです。そこでは直接的に引き起こされるリスクと、間接的なものの2種類があって、直接的なものはつまり温暖化が引き起こす数々の問題です。2020年の年末に環境省が「気候変動影響評価報告書」(5年に一回の発表)をまとめていて、これを元に気象庁は企業がなぜ脱炭素に取り組まなければならないのかというリポートを発表しています。今回のコラムでは、主にこれをピックアップします。

 ちなみに、間接的なリスクでは、例えば、脱炭素に取り組まない企業が銀行から融資を受けられなくなるなど企業選別、企業評価につながるものです。これは政府や自治体でも同様で、評判の悪い場所には人が集まりにくかったり、企業が進出してこなかったりということも十分に考えられます。
 最初に示した大分類での別のリスクは、脱炭素の取り組みによるコスト増についてです。これは企業や自治体だけでなく、家計にも大きな影響を及ぼします。特に、再生エネの絶対量が少なく、さらにその値段が高い日本ではリスクが増すことになります。これまでの政府の取り組みにも左右されるもので、政治、政策力、予見性などの優劣に由来するため、国によって差が出てくることになります。今後の努力によってその差を縮めることも不可能ではありませんが、脱炭素の実現ではデジタル化の十分な展開が必須で、この点でも日本は残念な力しかありません。困ったものですが。

 さて、環境省の気候変動影響評価報告書から見ていきます。
 最新版では、製造業、食料品製造業、エネルギー、商業、小売業、金融・保険、観光業、自然資源を活用したレジャー業、建設業、医療、その他の11分野での温暖化による産業・経済活動への影響の評価がなされています。基本的にはほぼすべての分野で影響が出るとされています。中でも「特に重大な影響が認められる」のは、食料品製造業、金融・保険、レジャー業、建設業の4分野だということです。

 わかりやすい具体例を挙げてみましょう。
 気候が変わることで食料品製造業では、コメや麦の品質などに影響が出ることになります。結果として、コメで作られる菓子類への影響や大麦の収穫が減ることによるビールの生産への影響があるとされています。この辺りは容易に想像できるものですね。
 また、金融・保険では災害が大規模化したり回数が増えたりすることから、保有資産の損害が拡大して保険金の支払額や再保険料の増加が想定されています。私たち個人や企業などが支払う保険料の値上げがすでに現実化しています。レジャー業でもリスクは現実化しています。雪が極端に減ったスキー場へお客さんが来なくなっている映像は毎年ニュースで普通に見るようになっています。当然ですが、関連の利益の減少などが深刻化しています。
 建設業では、特に、関東地域での夏の建物の空調の負荷が増大していることが取り上げられています。確かに、これまでの断熱や空調施設では異常な暑さに対応できなくなっており、新たな設計や改修が必要になっているのでしょう。
 このほか、製造業では洪水などによる工場などの生産拠点へのリスク、また、熱中症による生産性の低下、農業においてはコメの品質低下や収穫量の減少なども想定されます。

 気象庁はこのリポートで、日本国内においてほぼすべての産業が気候変動の影響を避けられず、経営が成り立たなくなる恐れがあると強い表現でまとめています。つまり、脱炭素は待ったなしの状態だと結論付けているのです。
 これらの気候変動影響を整理することと脱炭素の重要性の評価をすることが、今後の戦略を立てる上でのスタートになるということで、私も同様の意見です。
 個人にまで及ぶ影響は甚大です。恐れることはきっかけとして重要ですが、恐れているだけでは意味がありません。冷静に対応策を立案して実行していくこと、そして、前向きに新しいビジネスなどのチャンスでもあると考えを切り替えることも大事です。
 地域は、脱炭素のための一番大事な基地=ベースになることを忘れずに取り組んでもらいたいと心からお願いしたいと思います。

以上

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