2020.12.25

第十二回 2020年を振り返る

日本再生可能エネルギー総合研究所 北村

 年末よくある企画で申し訳ないのですが、今回はタイトル通りのコラムです。2020年は実際に振り返るに値(あたい)する年だったと思っています。
 テレビだと、報道で1年間起きたことのニュースのまとめや、情報番組では、グルメの振り返りや行った場所などを特集します。余計なことですが、過去のVTRをまとめるので少し手間はかかりますが、新たなロケもないので安上がりです。笑。

 さて、地域の新電力や再生エネを振り返ってみましょう。
 そろそろこの1年間の統計の数字も出始めました。今年は、いずれにせよ、すべての中では圧倒的に新型コロナの年であることは間違いありません。
 エネルギーへの影響もあり、需要が大きく落ち込みましたん。数%程度の需要が減り同様にCO2の排出も大きく減少しました。そんな中で、「再生エネは減らない」と、IEA(国際エネルギー機関)もだいぶん前に予測を立てていました。

 ドイツで信頼のある電力などの統計を出すBDEWが、先日出した2020年のドイツのまとめ(一部予測)でも、一次エネルギーで再生エネだけがプラスになりました。引用すると、ドイツの一次エネルギー需要は年間で8.7%のマイナスと大幅な減少を見せています。もちろん、コロナの影響です。石炭のマイナスが18%以上、石油が-12%と化石燃料が大幅に減りました。一方で、再生エネだけはプラスで、3%増でした。春先の予測が年間での実際の数字に結び付いたわけです。
 ドイツの電力に限ったデータも見ておきましょう。
 全発電のうち再生エネの割合は、45%(速報値)です。昨年が40%だったので、5ポイント増えました。実は、発電総量は大きく減っています。昨年よりおよそ400億kWh、6.5%も減少しました。再生エネ電力は驚くほど増えたわけではありませんが、割合としては飛躍したことがわかります。

 世界で新型コロナがぐずぐず続き、今、また強烈な第三波に見舞われています。
 年頭にあちらこちらに書きましたが、今年は日本のエネルギーの制度改革の年でした。発送電分離の期限やFIT制度の終わりの始まりであったり、新しい制度がスタートしたりですが、地域新電力に一番インパクトがあったのは、容量市場でしょう。四年後の供出金を決める入札で驚くような数字が飛び出しました。
 だいたい新電力の年間の利益が吹き飛ぶほどです。一斉に反対意見が飛び交いましたが、制度がなくなることはないと思われます。これは、地域新電力にとってはネガティブな動きです。

 一方、ポジティブな(私はそう思います)こともありました。エネルギー全体というより、日本全体に大きな影響がある出来事です。この事だけをもって、2020年は日本のエネルギーの転換点だったという評価になってもおかしくありません。
 おわかりの通り、10月26日の菅首相による「2050年カーボンニュートラル宣言」です。私も少し驚きました。ただ、世界で見るとかなり遅い宣言ですが。とにかく、この衝撃は大きく、わずか2か月で世界が変わったようです。これまでぐずぐずと「2050年は80%」と濁したり、国連で後向きの発言をして失笑されたりしていたのが、大転換を果たしたのです。実際に、これに伴った様々な動きがまさに爆発しています。

 政府では、イノベーションのためなどに多くの予算を付け始めています。
 あれだけ再生エネは難しい、高いと言っていた経産省が、2050年には再生エネで5割から6割と例示しました。海外に押されたとはいえ、ガソリン車の発売を2030年代の半ばに禁止するとまで言い出したのです。毎日、脱炭素がらみの記事が新聞をにぎわします。
 これだけ国が大騒ぎ(いい意味ですが)し始めると、企業や自治体ものんびりしていられません。特に、企業は脱炭素に取り組まないと将来がないと気づき始めています。RE100ややRE Actionに参加して、自分たちがいかに真剣かを示す会社も増えています。
 「2050年二酸化炭素排出実質ゼロ宣言」を表明する自治体は、年初に比べて何倍にも増えました。さっき、WEBサイトを覗いてみると、ちょうど200自治体になっていました。表明自治体の合計人口はおよそ9,014万人と全人口の3分の2です。
 コロナのことももちろんですが、こんなことが年末までに実際におきるなど、誰が想像したでしょうか。

 来年は、この傾向がさらに加速します。
 脱炭素への取り組みは当たり前になります。これからはいつまでにどう実現するかという速さの競争が始まります。
 再生エネ、特に再生エネ電力の価値は跳ね上がっていくでしょう。なぜなら、今作りださされている再生エネ電力はわずか2割に満たないからです。取り合いになるのは目に見えています。地域新電力の役割は、いかに再生エネ電力を調達し、地元に供給できるかが大きなポイントです。もちろん、PPAなど発電施設を増やすことへの支援も期待されています。

 大きな転換の年となった2020年に続いて、来年2021年は地域新電力にとって具体的な対応でのまさしく『勝負の年』になります。地域のためにその力を振り向けていただきたいと心から願っています。

以上

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