2020.12.3

第十一回 地域の電源を守る

日本再生可能エネルギー総合研究所 北村

 脱炭素に向かう大きなうねりの話を前回はしました。
 企業や自治体が、再生エネ電力を強く欲する脱炭素時代の需要家として浮上してきたことも書きました。
 そこで何が起きるか、地域新電力などの地元のステークホルダは何をしなければならないか、それが今回のテーマです。

 再生エネ資源を保有するのは地域です。太陽光、風力、水力など自然に存在するそのままのもの、また、若干の加工をしながらエネルギー化する木質バイオマスなども同様です。その地域資源の価値が、脱炭素時代には大きく膨らみます。価値あるものには金銭価値が付与され、それを巡っての争いが生まれます。大昔から繰り返されてきたことです。

 地域から見て、再生エネの需要家には2つあります。
一つは、地元の民間企業や自治体など普段から密接にかかわり、地域の仲間と言ってもいい存在でしょう。一方で、遠く離れた普段はお付き合いのない企業や自治体さんも需要家であることには違いありません。
 脱炭素が当たり前の時代には、後者が何らかの方法で再生エネ(当面は主に電力)にアプローチしてくることになります。なぜなら、人口が集中する多くの都市ではそこで賄えるだけの再生エネ資源が十分にないからです。

 アプローチの仕方はいろいろあります。すでに起きた事象として中央資本によるメガソーラーなどの建設があります。この時は、多くの地域でFIT制度による利益を持っていかれました。
 これからは中央の企業や資源の不足する自治体が、脱炭素化に利用する再生エネ電源を獲得しようとする動きが起きます。というより、すでに各地で発生しているといってよいでしょう。現存する再生エネとして利用が可能な電源は圧倒的にFIT電源です。それを中央に仲介する事業者が地方を飛び回っては、買い付け、実際には「特定卸制度」を使って電力の取得を積み重ねています。仲介事業者は、中央の新電力などエネルギー関係会社が多く、主に都会の大きな企業を対象に「再生エネ電力」を売って利益を出そうとしています。
 もちろん、これらの行為は完全に合法ですし、彼らのビジネスとして当たり前の行動です。非難などするつもりもありません。

 しかし、地域の立場から考えると、対応策を考えなければならない事態だと言わざるを得ません。なぜなら、今後価値がさらに上がっていく重要なエネルギーが地元をスルーして地域外に持っていかれることになりかねないからです。
 確認しておきたいのは、再生エネ電力の利活用は地域の利益に結び付くということです。地元企業にとってみれば、大手のサプライチェーン入るための切り札であったり、脱炭素を進める企業として優先的に融資を受けたり、するために欠かせないツールになるからです。
また、地元の自治体にでは、再生エネ電力を供給できることが企業誘致に結び付きますし、流行りのSDGs実現(「住みよい地域実現」と同義語)には欠かせない要素です。

 こんなに有用な地域の資源は、まず地域から使っていくのが重要だと思いませんか。日本の再生エネ(電力)は、まだまだ割合が少なくすぐにでも需要が供給を上回り、不足することになります。それをむざむざ地域外に渡してしまっては、地域の復興は遠のくばかりです。
 現在進行中のFIT電源の取引は、一部地域内での地産地消もありますが、多くが地域から地域外への流れで、それもプレミアムを付けたものです。
 プレミアムとは、1kWhあたり○○銭(引き取り手によって様々)を付加して売るもので、発電事業者はFIT制度にさらに上乗せの利益を受けることになります。これについても制度上間違っているとは決して言えないものですが、私は正直言って“欲張り”だなあと感じてしまいます。特に電気を地域外に売ってしまうのでは、地域に対するメリットが出てこない中での儲けです。

 そもそも「特定卸供給」の制度(改正FIT法)は、FIT電源を送配電事業者が一括して買い上げる中で、エネルギーの地産地消を実現するために導入されたものです。また、FIT事業計画策定ガイドラインの「第2章 適切な事業実施のために必要な措置」では、「事業の実施について、自治体や地域住民の理解を深めるためには、再生可能エネルギー発電事業者が自治体や地域住民と積極的にコミュニケーションを図ること」が努力義務となっています。
 はっきり言います。地元の電源は地元優先で使うべきです。
 FIT電源を保有する発電事業者は、それが地域の内外の出自かどうかは問わず、まず地域内での利用の可能性を確認してもらいたいと思います。もし、地域内で特定卸できれば、立派な地域貢献ができることになります。
 また、地域の自治体や地域新電力(存在すれば)は、地域の資産=FIT電源を含む再生エネ発電施設からの電気を地域内で利活用できるように積極的な取り組みをしてほしいと考えます。
 そのことが、必ず地域の活性化に結び付くとここで断言しておきます。

以上

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