2020.9.30

第六回 カギを握る自治体の協力(上)

日本再生可能エネルギー総合研究所 北村

 すでに、前のコラムでも書いたように、みなさんが住むまちが生き残れるかどうかは、再生エネの利活用がカギの一つだと私は本気で思っています。つまり、第一義的に、自治体が地域のエネルギーに対してどんな対応ができるかということです。そこでのポイントは、自治体が危機感を持つこと、地域衰退というリスクを回避するためには、今、何をしなければならないかをしっかりと考えることです。
 特に、自治体の首長さん、市長や町長、村長、そして県単位では、知事さんの動きは重要です。これまでかなりの数の自治体さんとお付き合いをさせてもらってきました。熱心な関係部署の担当者の存在も必須ですが、いろいろ下からの条件が整っても、一番上のトップがOKしなかったり、結論を先延ばしにしたりするところは、ほとんど何も実現しませんでした。もちろん、トップが進めようとすることを、部下がのらりくらりと邪魔をするケースもたくさんあって、まあ、自治体は伏魔殿だなと悪い意味で感心することもあります。

 さて、今回は、具体的にある県の取った再生エネに関する動きを取り上げたいと思っています。私の評価は、エクセレントです。
 それは、鳥取県です。
 ご存知のように、鳥取県は山陰地方という名前から暗そうな場所(すみません、山陰地方にはこれまで何度も行って素敵な場所であることはよく知っていますが)で、人口も60万人に届かない小さな県です。隣の島根県(こちらは70万人に足らず)と位置をいつも間違えられるという一種の自虐的ネタも有名です。
 鳥取と言えば、私はあることを思い出しまします。やや脱線しますが、私が本コラムでも本当に言いたい、地域の活性化につながる話なので書いておきます。
 思い起こせば六年前の2014年に、平井伸治鳥取県知事の「鳥取にはスタバはないけど、日本一のスナバがある」という発言をきっかけに、地元企業が『砂場カフェ』をオープンさせたことです。テレビでもかなり紹介されたので、覚えている方も少なくないでしょう。さっき調べたら、なんとチェーン展開していまや11店舗になり、鳥取県の名所になっているそうです。スタバが最後に来た県という「負(ふ)」を勝ちに結び付けるしたたかさは、おおいに見習うべきものがあります。

 前置きが長すぎました。
 本題は、鳥取県の企業局が、県のWEBサイトに載せている「地域電力会社に電力の特定卸供給を始めています」というお話です。具体的に言うと、企業局が保有している8つの太陽光発電所と3つの水力発電所からの電気を、特定卸しというシステムで地元の3つの地域新電力にこの4月から供給しているというものです。
 ご存知の方も多いと思いますが、特定卸しについて、少し説明しておきます。FITによる買い取りを受けている電力は、まず地元の送配電会社(ここでは、中国電力系)が引き取るのが決まりです。それだと地産地消にならないため、改正FIT法では、小売会社が発電側の承諾を得れば送配電会社から、電力の卸しを受けることが可能になるのです。小売会社が地元であれば、地元の電気を地元に供給できることになります。
 今回の場合は、発電事業者が鳥取県で、小売会社は県内の3つの地域新電力です。具体的には、東から鳥取市の(株)とっとり市民電力、島根県中部の南部だんだんエナジー(株)、西の米子市のローカルエナジー(株)です。この3つの地域新電力は、すべて自治体の資本が入っているいわゆる自治体新電力になります。人口の多い鳥取市と米子市で東と西、間に南部町が位置する形で、ある程度県をカバーしています。また、今、県中部に別の地域新電力の計画もあります。
 年間の供給電力の総量は、11,343MWhで、およそ 4,000世帯分に相当します。少ないかとお思いの方も県の人口規模を考えれば、一定のインパクトは残ります。
 ここで気づいたと思いますが、実は、鳥取県は自治体新電力の先進県なのです。地元自治体の熱心さに加えて、今回は県もサポートすることになり、先進性がさらに増したといってよいでしょう。

 ここで重要なことが、2つあります。
 一つは、広い意味での市町村と県の協力です。再生エネ(FIT電源)に関して、発電所を持つ県と地域新電力を持つ市町村がコラボするということです。簡単そうに見えてここには結構なハードルがあります。ある県では、県の環境関係の部署はすごく熱心に再生エネに取り組んでいる一方、市町村へのアプローチがややおろそかになっていたり、市町村からの要望に応えきれなかったり、ということが実際に起きています。
 もう一つは、価値が急上昇する再生エネとしての利用のお話です。

 やや脱線気味の話題もあって、字数が大きくオーバーしそうになってきました、大変申し訳ないのですが、再生エネ利用については、次回の、「カギを握る自治体の協力(下)」に回したいと思います。

以上

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