2020.9.18

第五回 あなたのまちは生き残れるか

日本再生可能エネルギー総合研究所 北村

 前回のコラムの柱は、再生エネの利用が「プッシュ型からプル型」に変わってきたということでした。「FIT制度」という、実際の電力需要は関係なしに再生エネ発電施設を増やすための施策で後押しするやり方が「プッシュ型」で、一方、再生エネ電力が欲しいという需要が引っ張るのが、「プル型」になります。
 客観的に見て普及が必要と、例えば、行政が考える時、多くの施策はプッシュ型からスタートします。しかし、一定の知識が広まり、確かに必要だ、重要だということがわかると、しっかりとした需要が生まれます。今の再生エネに対する需要は、FIT制度が始まった当時の作られたものではなく、実需といってよいでしょう。ここまで到達しないと本当の広がりとは言えず、普及には届きません。ついに、再生エネ電力もそこまで来たといってもよいでしょう。これぞ「再生エネ主力電源時代」の到来です。

 別の角度から見てみましょう。
 これは、再生エネ電力の価値が認められたということです。必要、重要との認識は、イコール、消費したり、それを使って何かをしたりする価値があるということです。再生エネ電力は、新しいステップに入りました。
 この動きは、まず民間企業、そして自治体にも広く及んでいることを忘れてはなりません。最近のエネルギー関連のニュースで目立つのは、○○会社の工場、本社が再生エネ100%に転換などという再生エネ化のトピックスです。ネットで調べると、複数の製薬会社の例にあたりますし、横浜市のように、自治体の庁舎を再生エネ化するのも密かなブームのようです。

 長々と前回のおさらいをしましたが、このエネルギーに関するトレンドを私たち住民の立場から見直してみようというのが、今回のテーマです。これはたいへん重要で、各種の側面があります。定期、不定期を問わず、続けていくつもりです。

 今回のこのトレンドは二つのポイントで必要があります。
 一つは、地域にとって、将来を分ける大きな出来事だということです。これは、プッシュ期のメガソーラーブームとは決定的に違う点です。「FITにうまく乗って、億単位のお金を儲けた人と儲けそこなった人がいました」という、伝説話とは違うのです。今回のプル型のメインプレーヤーは、まず、大きな資本を持つ大企業で、場合によっては裏に外資が控えています。また、自治体が前面に登場し始めました。最近のニュースをひっくり返せばよくわかることです。
 例えば、環境省の進める「2050年二酸化炭素排出実質ゼロ宣言」を表明した自治体は、今年になって急激に増えて、152団体となりました。人口規模で7,000万人以上と日本の過半数を優に超えています。
 有力な企業が再生エネ電力の利用に一斉に走り出し、大きな需要が生まれつつあります。呼応するように、自治体も求め始めているのです。間違いなく、ビジネスが膨らみ、大きなお金が動くようになります。

 ここで、私たち、市民、住民の立場になって考えてみましょう。このいわば「メガトレンド」に『私たちのまち』が“ついていっている”、“ついていけている”かどうかが、気になってきませんか。
 ここで、二つ目のポイントになります。
 実は、『私たちのまち』、自治体の中で、トレンドに気付いて行動を始めているところとまったく気にかけず対応していないところとで、大きく乖離した二つの塊となっているのです。一つ目のポイント、「自治体、地域の将来を分ける出来事」に気づいているまちと気づかないまちがあるということです。
 先に示した、「2050年二酸化炭素排出実質ゼロ宣言」の表明も一つの証(あかし)ですが、環境大臣の小泉さんが、つい先日、表明をした自治体に対して、再生可能エネルギーの導入などで財政支援する考えを示したのです。
 ほら、もう差がつき始めました。

 地方の疲弊が言われて長く、もう疲弊しているのが、“当たり前”化しているといっても過言ではないでしょう。
 そんな時、再生エネの利活用による大きなチャンスは、まさに千載一遇の機会です。この機会をつかめないまちは、深く沈んでいく可能性もあるのです。みんなが成長を続け、そろってハッピィな時代は過去のものです。私は、例えば、『自助』などのように、巷にはびこる自己責任論を唱えるつもりは全くありません。努力をしても一定の生活水準に到達できない環境にある人への支援を、自治体や国は怠ってはなりません。
 一方で、ほぼ平等にある機会をどうキャッチするかは、自由な競争の中の出来事です。

 小泉さんのある種のパフォーマンスは別にしても、私たちは、自分たちが住んでいるまちが、「気づけるまちか、気づかないまちか」をチェックする必要があるかもしれませんね。もし、だめでも、黙って座っているだけでは、何も変わりません。自治体に何かの方法で働きかけるのも一つですし、ある地方の民間企業は、RE100 の中小企業版「RE Action」への参加を地元企業に広げるための事業を立ち上げようとしています。
 もう一度、問います。
 あなたのまちは、生き残れますか。

以上

一覧へ戻る