2022.12.26

第五十三回 脱炭素実現の2023年へ、地域新電力が担う新しい役割

日本再生可能エネルギー総合研究所 北村

 ロシアのウクライナ侵略などの国際情勢、国内を振り返っても安倍元首相への襲撃、統一教会問題など、まさに激動の年が終わろうとしています。
 これらは決して他人ごとではありません。エネルギー費の高騰をきっかけとする物価高、温暖化の進行による線状降水帯発生による災害や豪雪など、私たちの生活に直に影響を及ぼしています。
 これに対して、私たちができること、できないことなど、それぞれ限界はありますが、未来に向かって持続的な社会を維持するためには、ひとりひとりが現状を把握、理解して、可能な限りの努力をする必要があります。

 特に温暖化防止の観点では、個々の国がカーボンニュートラル宣言や国際会議での合意などを目指すレベルから、脱炭素の実践の段階に移ったと言えます。つまり、「やります」という表明の先の、「何をどう実行するか」が問われることになります。脱炭素とエネルギーは最も密接的な関係にあります。私たちは生活のすべてで二酸化炭素を排出しているのですから、日々の生活での行動に責任があるのです。
 最も重要な、エネルギーをなるべく使わないようにする「省エネ」や「エネルギーの効率化」や、エネルギー利用のピークをずらしたり下げたりする「デマンドリスポンス」、もちろん、自分で電力を作り出す「自家消費型の太陽光発電の導入」、自家用車を電化する「EVへの転換」など、技術やシステムの進歩に合わせて、個人レベルで出来ることも増えてきました。
 このコラムのテーマである、地域新電力も前述したすべての工夫や脱炭素の実施について、サポートする能力を持てるようになりました。これは、電気をどこかから調達して需要家に供給するという、もともとの仕事以外での、広く脱炭素の実現に寄与する役割を意味します。逆にいうと、今の時代ではその新しい役割が期待され、責任も生まれたと考えることができます。時代の変化は、そこに存在している様々な団体や組織の役割をも変えていきます。地域新電力も「新しい時代=脱炭素実践の時代」に即応し、その責任を果たす必要があります。また、それは新しいビジネスにつながり、このコラムでもたびたび書いている地域の活性化にもつながることになります。

 今、各地の地域新電力は、自家消費のための再生エネ電源やコーポレートPPAなどの発電拡大に注力を始めています。また、熱でも動きがあります。例えば、脱炭素先行地域に選定された秋田の大潟村では、選定後に地域エネルギー会社を立ち上げて、もみ殻を使った熱供給に取り掛かりました。また、重点対策加速化事業に選ばれた安曇野市では、エノキの菌床栽培で大量に発生する廃棄物を使った熱事業を進めています。こちらは地域新電力の立ち上げを検討中です。また、節電ポイントの実施をきっかけに、電力のデマンドリスポンスに参入する新電力も急増しています。いわゆるアグリゲーターの仕事のひとつです。
 いまや新電力は、その機能を拡大し、複数の役割を持ったエネルギー会社に脱皮しようとしています。それは時代の要請であり、ある意味、地域の要請でもあります。

 つい先日12月23日に、脱炭素先行地域の第三回の募集要領が公表されました。募集期間は2023年の2月7日から17日までです。全体的に条件が細かくなり、一回目、二回目よりハードルが上がっているように感じます。
 中でも、提案者の部分で大きな変更がありました。11月1日の評価委員会による第二回の総評で提案されていましたが、共同提案者として、民間事業者等との共同提案を必須とすることになりました。
 共同提案者となる民間事業者等の役割は、「計画の全体又は一部について責任を持って関与し、主たる提案者である地方公共団体と連携して取組を実施又は支援する意思を有する者」とあって、なかなか責任重大です。業種・属性は問わないとありますが、誰でもよいというわけではなく、これこそ、地域新電力の出番だとよくわかります。
 これまでの二回の選定で、半数以上の地域の提案で地域新電力やエネルギー会社の連携が明記されていたのは、ご承知の通りです。今後は、共同提案者としてはっきりと手を挙げることが必要になります。

 今後の地域新電力の役割についてまとめていますが、これは私の個人的な希望ではなく、すでに脱炭素化を進める地域や全体政策をつかさどる政府の期待でもあることに気づかれたと思います。名称についても、電気の小売りが強く想起される「新電力」より、様々な役割を担う地域エネルギー会社と呼ぶのがぴったり来ますし、今後はそのように呼ばれるようになると確信します。
 たとえ名称がどうなろうと、もともとの目的である、地域を元気にする、地域で経済循環を起こすことは一貫して変わりありません。厳しい事業環境ではありますが、新しい役割をうまく取り入れて、地域と協力しながらさらに地域に貢献してもらいたいと心から祈っています。私も変わらず、そのサポートを行っていく覚悟です。
 何となくお感じになっているように、本コラムは今回を持って終了することになりました。長い間、ありがとうございました。

日本再生可能エネルギー総合研究所 代表 北村和也

以上

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