2022.11.28

第五十二回 脱炭素先行地域第二回選定でわかった地域新電力の更なる重要性

日本再生可能エネルギー総合研究所 北村

 政府が推し進める地域主導の脱炭素の切り札、「脱炭素先行地域」の第二回目の選定結果が11月1日に発表されました。今回は応募50提案に対して、20地域が選定されています。4月末の第一回選定では、応募79、選定26提案だったのでどちらも少なくなっています。この先、3年程度、年二回募集があり、合計100を超える脱炭素のモデル地域が生み出されることになります。
 脱炭素先行地域は自治体が主導する提案で、一定のエリアの民生の電力を2030年までに100%脱炭素化することが求められます。また、選定地域に選ばれると、優先的に上限50億円までの「再エネ交付金」の支援が受けられることになっています。
 先日、ある地方で環境省の地方環境事務所が主催した自治体と企業とのマッチングイベントに参加しましたが、多くの市町村が先行地域に応募したいと話していたのが印象的でした。

(脱炭素先行地域、第二回選定地域一覧 出典:環境省)
(脱炭素先行地域、第二回選定地域一覧 出典:環境省)

 選定地域の応募要件は、ガイドブックなどにしっかり示されていますが、二回の選定結果と選定発表後に示される評価委員会の「総評」を読むといろいろなことがわかります。特に選定にあたっての評価点や条件、今後の選定の方針が示されています。

 二回目の特徴の中ではっきりしているのは、地域での連携です。
 これは、実現性と強いつながりがあります。先行地域は実証やFSとは違い、提案の実施を目的としています。ですから、地元の誰と合意形成を図り、一緒にどのように実現させるかを書き込む必要があります。もう少しわかりやすくいうと、地元を中心の実施体制と現実的な道筋を示さなければ通りません。
 先行地域の提案には、共同提案という制度があります。自治体と連携して実行する民間企業や団体などが参加するものです。評価委員会では、共同提案は連携の最も強力な姿、言わば完成形と見ています。第二回目の選定地域を見ると、選定された20のうち、17の提案に共同提案者がいます。

 最重要な存在が、地域新電力をはじめとした地域のエネルギー会社です。
 実際に、第二回目の選定では、6つの提案に7社の地域新電力などが入っています。また、共同提案者としてでなくても、提案書の中に協力、連携先として示されているものが、10社近くあります(*単独の企業やエネルギー会社も含む)。合わせると十数の提案に地域エネルギーが入っているのです。
 大きな人口を抱える市は、新電力を立ち上げるのは簡単でないため、地方の大きなエネルギー会社と組むことが多くなっています。そのケースも含めると、ほぼすべての提案に地域で電力などのエネルギーをコントロールする会社の協力があることがわかります。この傾向は、一回目より二回目の方がさらに強くなっています。
 結論としては、脱炭素先行地域に選定されるためには、まず実現性が高いことを認められる必要があります。そして、中でも地域新電力を含む地域エネルギー会社との連携が必須だと言い切ってもよいと思います。
 三回目以降は「民間事業者等が共同提案者に含まれること」が要件になる可能性が高くなっています。

 評価委員会が示した総評では、第二回目はさらに地域との協力や連携が強調されるようになっています。
 例えば、提案内容で委員会が高く評価したという、「地域経済循環への貢献」では、
〇需要家の脱炭素化を地域経済に組み込むことの明確化
〇地元事業者の参画と育成を前提とし、取組の成果が地域に裨益することを意識した提案
 を示して、地域の需要家と共に脱炭素で経済の活性化を図るだけでなく、地元の事業者の育成にまで言及しています。
 また、「今後の期待」として、
〇地元の民間企業とは積極的に連携し、事業実施体制に確実に組み込まれるよう、調整を図ること、とも書き込んでいます。

 これまで、環境省や経産省、総務省などが、地域活性化を目的として、このような地域内での活動を推奨してきたことはありました。しかし、ここにきて、政府の施策、先行地域を実現させるための要件としてまとめるまでになったことがわかります。
 政府が、カーボンニュートラルを実現するためには、再生エネ資源を保有する地域がメインとなって進める必要があると考え、それを具体的に展開するため地域内の協力体制やシステムを構築しなければならないと考えるようになったからです。
 その核のひとつとして、地域新電力などの地域エネルギー会社があるということも認めているのです。

 現実の事業として、地域新電力など小売会社が厳しい環境にあるのはその通りです。しかし、求められる役割は官公庁も含めて大きいのも事実です。今後は、脱炭素先行地域の提案などをきっかけに、発電やアグリゲーターなどの分野も取り込みながら、新しい事業展開を地域と一緒になって進めてもらいたいと切に願います。また、そこに開ける未来は決して暗いものではありません。

以上

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