2022.6.21

第四十七回 グリーンウォッシュという名の大きなリスク

日本再生可能エネルギー総合研究所 北村

 みなさん、「グリーンウォッシュ」ということばを聞いたことがあるでしょうか。
 馴染みのない人の方がきっと多いでしょう。グリーンというから、このコラムで考えれば、環境や脱炭素、再生エネに結び付くし、ウォッシュは洗う、なので、何かをグリーン(緑)やクリーン(清潔)にすると想像する人もいるかもしれません。
 もったいぶるつもりはありませんが、実は、脱炭素を進める企業や自治体、地域新電力などにとって、大きなリスクになる可能性を秘めたワードです。

 グリーンウォッシュとは、日本語版のWikipediaによれば、「環境配慮をしているように装いごまかすこと、上辺だけの欺瞞(ぎまん)的な環境訴求」となっています。英語では、Green washingで、環境に配慮していない行為をウォッシュ(洗って)して、グリーンのようにごまかすことです。
 環境や脱炭素に配慮しているようなふりをして、実際にはやっておらず、消費者やお客さんをだます行為という、悪い意味になります。こんな指摘を受ければ、企業などにとっては大変なマイナスになります。まだ脱炭素に取り組んでいない、単に遅れた企業という評価ではなく、インチキをするネガティブな悪徳企業というレッテルを貼られることと同じなのです。
 一生懸命に再生エネ電源を生み出したり、いろんな契約で調達、利用したりしても、全く逆の非難を浴びる結果になりかねないところが本当に恐ろしいところです。

 典型的なグリーンウォッシュは、「嘘」から生まれます。
 多くは、原料の調達や製造過程などでちゃんとした環境へのケアができていないのにやっているふりをすることから生まれます。厳しいのは、製造プロセスには、働いている人間の人権の問題さえ含まれるところです。人権侵害が疑われるウイグル自治区で製造された太陽光パネルを使うことが問題になったことを覚えているでしょう。
 また、一般的に再生エネ発電とされている施設でも、環境への配慮が欠けているなどで、創られた電力が再生エネと認められないケースさえあります。「持続的でない発電方法や災害の原因となる発電施設」の場合です。前者は、後で説明します。災害の原因とは、例えば、山の斜面にたくさんの木を伐採して作られた施設などのケースで、地滑りを起こすなどの大きな被害までもたらされかねません。
 そういった電力を実際に使っていて、再生エネによる電気や脱炭素に貢献する電力を導入という表現をすれば、それはグリーンウォッシュになってしまいます。
 直接、エネルギーの話ではありませんが、最近ブームになっている大豆ミートの国内最大手の不二製油グループの本社は、大豆調達ネットワークの点検を行っているそうです。自社で使っている大豆が、森林破壊につながる耕地で生産されていないかのチェックなのです。
 お分かりだと思いますが、“知らなかった”は通用しません。どこから来た電気か、どうやって作られているかまで調べるのが企業としての当たり前の義務だと考えられているからです。グリーンウォッシュを事前に防ぐ作業も、すでに企業の活動の基本となっているのです。

 「持続的でない発電方法」の見分け方はなかなか難しいものがあります。
 RE100などの国際イニシアティブや国際的な企業などは独自に基準を定めています。メガソーラーはダメとか、大型水力発電の場合、新設は認めないなどのばらつきもあります。
 最近、特に厳しい目で見られるようになってきているのが、木質バイオマスの発電施設です。欧州委員会の議論は、すでに多様性の高い原生林からの木材は認めるべきではなく、発電能力5MWを超える木質バイオマスの発電施設はグリーンに入らないと変更されました。
 近い将来、一定規模以上の木質バイオマス発電で、熱の利用がされていない施設からの電力は、再生エネ電源とは認められなくなると私は考えます。日本に多い輸入材を使っている発電は厳しく、途中から再生エネ電源でなくなるリスクさえあります。

 地域新電力の立場から見ても、グリーンウォッシュのチェックは必要になります。
 現在でも散見される、FIT電源を再生エネ電力と称することは制度的にも間違いです。ある意味論外ですが、今後は、これに対して、グリーンウォッシュという非難ワードが飛んでくることになります。もちろん、今回取り上げたように、「持続的でない発電方法や災害の原因となる発電施設」から調達した電力は、形式上は非FITの再生エネ電源であっても、グリーンな電力と謳(うた)うことはできないと思ってください。

 グリーンウォッシュを避ける最も的確な方法は、情報開示です。
 ここでいう開示とは、知っていることを出せばよいということではありません。徹底的な調査、つまり調達や原料、発電方法、施設の立地などまでたどって調べることが必要です。たいへんな部分もありますが、リスクを避けるためには必ず通らなければならない道なのです。

以上

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