2021.11.4
第三十三回 自主的な節電の勧めについて
日本再生可能エネルギー総合研究所 北村
前回のコラムでは、少し別の角度からとして、私の脱炭素の情報収集のやり方を書きました。そして、一転して今回は、「節電」です。
このコラムは、私にとって気の置けない仲間に対する発信という意味があります。勝手ですが。そんな中で、ちょっと気になることがあり、節電というある意味では脱炭素に向けての正攻法のお話をしてみます。
背景には、もちろん脱炭素を何としてもやり遂げなくてはならないということがあります。結論から先に書きます。産業部門に比べて、家庭からの二酸化炭素削減の努力が足りないのではないか。そこで自主的な節電の勧めということにつなげます。
現在、私は脱炭素のコンサルタントとして、大きな企業さんなどアドバイスを行っています。多くの会社は、かなり一生懸命に取り組んでいるといっていいでしょう。企業の立場から言うと、脱炭素を実現しないとビジネスが成り立たないという切羽(せっぱ)詰まったところがあるとはいえ、これは評価に値します。
先日、政府が第6次エネルギー基本計画を閣議決定しましたが、再生エネを拡大する裏付けがないとか、実現性が乏しい旨の議論が沸騰しています。企業サイドからは、昨年秋の突然の、手のひら返しのような政府のカーボンニュートラル宣言についてまず一言いいたいでしょう。コスト削減の観点からではあっても、これまでかなり省エネなどを進めてきていることも事実です。さらに努力しろというのか、原資はどうするのかという不満があっても仕方がないかもしれません。
それに加えて、目の前にエネルギー費の高騰が襲ってきています。天然ガスをはじめとした化石燃料が脱炭素の進行とのギャップの中で不足の気配があるからです。一種、調整局面ではありますが、目の前の価格は事実です。欧州ほどの値上がりはないものの、電気代もガソリンもすでに上がっています。日本の国力が落ちたことから円安が進んで、さらに追い打ちがかかっています。
一方、家庭での脱炭素はどうでしょうか。
日本の二酸化炭素の排出量を家庭部門で見てみましょう。発電でのCO2排出を最終の電力消費に合わせて配分すると(間接的な排出量)、家庭部門は全体の15%程度となります。家庭での節電はこの間接的な排出量を減らすことにつながるので、この数字を使うのが現実的です。政府の削減目標が2030年までに46%、2050年にゼロカーボンと考えると決して小さな数字ではありません。
一方、家庭で電気を使っている私たちの削減努力はきちんとされているでしょうか。私も胸に手を当てて考えると、チクッと痛みを感じます。
もうひとつ、節電を勧める大きな要因があります。
最近特にニュースなどでも取り上げられているこの冬の電力不足のことです。前に書いた天然ガス不足や化石燃料の高騰とつながることで、さかんに危機があおられています。「あおり」と書いたのは、実際にはいくつかの前提条件があり必ず危機が来るわけではないからです。メディアによっては、中国ではすでに起きている、日本でも停電必至のような筆致です。中国の停電は政府の政策に賛意を示すための翼賛的な自主停電が多いことなどには触れていませんが。
言い方は微妙になります。誤解を恐れずに発言すると、私はいい機会ではないかと思うのです。それは電力不足対応の中で、家庭での努力がまだ足りていないことに気づき、家庭からの二酸化炭素排出への意識をきちんと持つきっかけになると考えるからです。
日本のこの冬の状況は、資源エネルギー庁などのデータによれば、いわゆる予備率は3%を超えてはいるものの、余裕十分とは言えないというものです。節電要請はしない方針らしいのですが、それならば、こちらから自主的にやってみようと提案します。電気の使用を減らすことが何より需給ひっ迫を押さえることにつながります。また、日本では電力による二酸化炭素の排出が圧倒的に多いので、家庭での節電は脱炭素への最も効果的かつ有効な手段になります。
東日本大震災当時、計画停電があって、家庭でも確かに困った事態となりました。それから10年、災害を除いて停電もほとんどなく、電気の使用量についてさほど気に留めていない人たちが圧倒的に多いと思います。今回、自主的な節電をするにあたって、普通の家庭なら、無駄についている照明や家電のスイッチを切ることなどいくらでもやることがあると思います。暖房が使えず凍えるとか、生きていくのに支障があるという事態を想像する人はいないでしょう。
節電は、具体的には、まず必要のないスイッチを切ることです。そして、ここはポイントなのですが、一般的に電気の需要が多い時間帯に電気を使わないようにすることです。テクニカルな言い方をすると、電力需要が多い=JEPXの電気の卸売単価が高い時で、いわゆるピークカットをすることが、最も効果的な対応となります。例えば、洗濯機を需要の少ない時時間帯に回すということです。みんなでやれば効果はあります。
私は、もしこの冬に電気が足りなくなるようであれば、少なくとも家庭に対して積極的に節電要請をするべきだと考えます。
脱炭素は、地球温暖化を防ぐためなのです。私たちの将来に迫る危機に対して、今の段階から乗り越える努力するという当たり前のことです。危機感がないところに真摯(しんし)な対応は生まれません。もう一度繰り返します。
自主的な節電をしませんか。
以上