2021.10.28

第三十二回 脱炭素の情報にどうアクセスするか

日本再生可能エネルギー総合研究所 北村

 つい先日、2030年に向けての政府のエネルギー政策が決まりました。
 正確に言うと、「第6次のエネルギー基本計画」が持ち回りの閣議で決定されたのです。カーボンニュートラル宣言を行った日本政府として、脱炭素実現に向けてエネルギーに関する施策をどうするかという基本となるもので、大変重要なものです。
 ただし、すでに内容は案という形で何度も晒(さら)されていますし、実現性に欠けるなどの批判もメディアで十分取り上げられました。ということで、ここでは、そのポイントとして、「再生エネを最優先させる」、「再生エネ電源を倍増させる」、などが書かれていることを押さえるだけにとどめておきます。

 今回のテーマは、「脱炭素情報をどう捕まえるか」という不思議なテーマにしてみました。実際には私がどう情報を集めているかというノウハウも含めて、やや散文的な内容です。手の内をさらけ出すのは、私にとってデメリットしかないのですが、ネット社会では誰にでも多くの情報にアクセスできるのですから、隠しておいても仕方がありません。
 最終的にひとつ言いたいことがあるのですが、それについては、読んでもらえればわかるとだけ言っておきます。(笑)

 さて、具体的な脱炭素関連情報へのアクセスの話です。繰り返しますが、私個人の話です。
 まず、新聞です。
 朝日新聞はだいぶん長く購読しています。そして、昨年の冬からは日経新聞を読み始めました。忙しくても必ず目は通します。もちろんデジタルです。
 やはり、活字は基本ですね。もともとテレビ局に勤めていたので、映像が強い力を持っているのはよく知っていますが、情報の多様さとディテールなどに関しては活字の敵ではありません。私の仕事は、再生エネを中心としたエネルギー関係ですが、それ以外の事柄を知らなくてよいわけではありません。経済や社会的な動きと必ず連関しているので、広く世の中の動きを知るのは必須です。
 デジタル化の中で、情報の整理(ソートなど)を考えると日経新聞のキイワードピックアップは大変便利です。例えば、脱炭素や新電力などのキイワードを登録しておくと、自動的に紙面に赤枠がついてくるので、記事を探しやすいのです。

 そして、二番目に来るのが、Twitterです。
 意外に思うかもしれませんが、これがかなり良いのです。新聞での抜けやさらに細かく、専門的かつ正確な情報をかなりの確度でフォローできます。新聞記事は私たちがコンサルティングなどの仕事でそのまま使うことはほぼできません。なぜなら記者がいくらプロと言っても、レベルは本当の専門家には遠くかないません。それどころか、きつい言い方をすれば、嘘がかなり混じっています。例えば、地域や記者クラブを定期的に移動し、広く浅く勉強することしかできない彼らにそれ以上を求めるのは酷というものです。私自身が長く記者をやっていたのでよくわかります。
 一方、Twitterには本当の専門家が登場することが多いのです。字数制限があるので、短いものしかありませんが、資料やエビデンスにつながることが大変助かります。もちろん、本当にひどいレベルの“専門家”も数知れません。ある元経産省の役人などはその典型です。実際にわかっていないこともあるでしょうが、ある特定側の利益のため宣伝を請け負っている傾向も見えます。
 Twitterなので当然フォローをします。
 ここで重要なことは、自分と同じ方向を向いた人たちよりも、反対側にいる人たちを積極的にフォローすることです。私は、地域に寄り添ったエネルギーの利用を基本としますが、それを非効率としたり、再生エネ自体を否定したりする人も少なくありません。
 意見を異にする人のフォローは、反対派の考え方の根拠に触れることはもちろん、自らの見解の穴に気づかされることもよくあります。さらに、まともな反対派は、きちんと根拠を示してくれます。間違いがどこの資料からやってくるのか、どういうエビデンスが流布しているのか知ることにつながります。
 私がたいへん少ない人数で仕事をしているので、重要な資料がTwitterで見つかることもあります。恥ずかしいのですが。数の多い、各種エネルギーに関する委員会の資料などは大変重要ですが、私などにいちいち知らせてきません(若干は、役所から連絡はもらえていますが)。反対の意見の方々は割と細かくてまじめなので、委員会などをこまめにチェックしているケースが多いのです。
 それから、Twitterでは海外の資料手に入ります。IEAやIRENAなどの機関、BloombergNEFなどのフォローをしておけば、重要な資料は最速でアクセスできます。また、海外の(私の場合、ドイツが多い)メディアを追跡しておくのも役に立っています。
 最近は、週刊誌や月刊誌の力が落ちている気がします。ごく一部以外は手に触れることはありません。

 あとは、といってもこれで終わりです。新聞とTwitter、、、あれれ、と心配にならないでください。特に隠してもいません。これらをこまめに見ていると、コンサルティングや原稿、セミナーのベースを作ることが十分にできます。
 世界ではかなり遅れている日本の情報レベルですが、それでも昔より格段に、というか比べようもないくらいの差があるのです。ぜひ、みなさんも仕事や興味の深堀りなど、いろいろ試してみてください。

 さて、すでに長いのですが、最後に言いたいことを。
 これらの情報は、私のパソコンのある項目に年月日を付け加えてほうり込んであります。タイトルは、「脱炭素」です。ここにとにかく入れてしまい、項目別の分類(例えば、「政府の動き」、「経産省」、「脱炭素ロードマップ」などなど)は、当面はほぼしません。昔はよくやっていたのですが、いちいち検索するのが面倒なのと、分けることで逆に関連性を見失うことになるのに気づいたからです。ただし、一定期間が経てば整理します。大半は、捨ててしまいます。
 実は、この脱炭素の項目の中に、やや異質なものが入っているのです。例えば、「安い日本」、「デジタル化」などなど、紛れ込み始めました。外そうかと思ったのですが、実は脱炭素にも関係があると気づきました。
 例えば、貧しくなる一方の日本という事実は、脱炭素での大きな壁になっています。円安は、化石燃料の輸入に大きな打撃ですし、輸入が大半の太陽光パネルを高くしてしまいます。また、デジタル化は、それこそ効率化が必要な脱炭素の基本と考えることができます。セクターカップリングやDRなどデジタル化なしではできないことだらけです。

 少しだけわかってきたでしょうか。
 脱炭素は、多くの事象を縫合した総合的なテーマだということです。地域という観点からみるとよくわかります。脱炭素とSDGsが強く結びついていることに同意する人は多いと思います。だから脱炭素によって地域活性化するという、政府の脱炭素ロードマップは私にはすんなり腑(ふ)に落ちます。
 カテゴリーを超えた普遍的なテーマ、それが脱炭素化なのです。

以上

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