2021.7.5

第二十五回 今こそ、地域内コラボを進めよう

日本再生可能エネルギー総合研究所 北村

 前回、前々回と、脱炭素実現に向けた政府の方針として、地域主導を掲げたことを説明しました。温対法の改正と地域脱炭素ロードマップがその柱であることは、理解してもらえたと思います。また、言い方の良しあしはともかく、それはアメとムチの政策です。取り組みに積極的な地域には、「再エネ交付金」などのような強い後押しがある一方、結果として地方の選別が加速する可能性も十分あります。
 私の周りでは、すでにロードマップの目玉でもある「先行100地域」にどうやって選ばれるかの検討を始めた地域が複数出てきました。だいぶん相談も受けています。善は急げということでしょう。

 さて、地域主導の脱炭素を前進させ、地域にアメをもたらすためにどうすればよいか。これが今回のコラムの主眼です。
 回答は、すでに改正温対法やロードマップに示されています。
 温対法では、まず自治体が脱炭素の目標を立てて「促進区域」を設定し、実行計画を示します。それに呼応して、企業が事業計画を提案して自治体から認定を受けるという流れです。企業は地元の会社でなければならないとは書かれていませんが、全国に1,700以上ある自治体すべてに網を張る全国企業はあり得ません。地元の情報にはやはり地元の会社が一番早くアクセスできることは間違いないのです。
 つまり、脱炭素の取り組みは自治体と地元企業のキャッチボールを軸に進められることになります。ところが、これからの再生エネ拡大は単純に発電施設を増やす、では難しくなってきています。第三者所有というPPAや自己託送いう仕組み、DRなどの調整力を駆使して初めてより多くの再生エネが利用できることは常識です。さらに交通分野の主役となるEVの導入やそれを使ったシェアリングやVPPなど、システムは複雑化する一方です。ここにはどうしても外部のノウハウによるサポートが必要になります。
 地域の中に自治体+地元企業のコラボが存在したうえで、外部のサポートを受けるという仕組みが、今後は主流になっていくでしょう。これまでは、地元企業の頭越しに中央の大きな企業が自治体に入り込むといったスタイルが多くみられましたが、地元への経済活性化効果などを考えるとあまり成功した例を知りません。

 地元企業には何があるかというお話です。
 発電施設の拡大であれば、太陽光発電などの施工事業者さん、電力を供給する地域新電力、PPAで必要になるお金を融資する地元金融機関などがすぐに浮かびます。太陽光パネルを設置することのできる建物を所有する側も立派なステークホルダーです。地元企業の集まり、商工会議所も手を挙げてくるでしょう。また、脱炭素は、熱や交通もやり遂げなければならないので、家屋の建築会社、車の販売店やリース会社もありえます。かくして、地域内の少なくない会社や団体がコラボの対象となります。
 コラボのやり方はいろいろです。事業実施の主体として契約ベースで結び付くのは固いやり方です。一方で、地域全体の脱炭素プランを、協議会方式で情報共有しながら組み立てていくやり方も存在します。もちろんそこには自治体の参加は必須です。こうやって進めていく中で、不足するノウハウについては外部の力を借りることになります。しかし、このやり方ならば、主導権は地域に残ったままです。そうでないと、結局メリットはこれまでのように外に流出してしまいます。

 前回も書きましたが、地域脱炭素ロードマップの冒頭部分はこうなっています。「地域において、行政・金融機関・中核企業等が主体的に参画した体制を構築し、脱炭素と地域課題を同時解決する事業や政策を実行していく」です。
 私が前半で書いたことがそのままの形で示されていますね。
 政府(中心となっているのは環境省)が目玉と考えているが「脱炭素先行100地域」です。冒頭に書いた通り、狙っている自治体さんがどんどん出てきているようです。検討が進んでいる「再エネ交付金」は、原発に対する電源三法での交付金に比されています。個別の事業ではなく、プロジェクト全体に複数年度で支給される方向で、これは先行地域限定とみられます。「限定」に弱い人は多いと思いますが、究極のアメになるかもしれません。
 先行地域の選定は来年度からで、年度末までにはガイドブックなどが示されることになります。これまでの情報では、最初に選ばれるのはすでにある程度の実績を積んでいる地域になりそうです。ただし、これからのところは対応しようがない、のではなく、なるべく早く準備に取り掛かるべきなのです。

 政府の意図は別にして、地域は脱炭素対応によっても選別される時代になりました。地域内のコラボができるかどうかは、地域の将来を左右する重要なポイントです。地域新電力は地域をまとめる役割を果たすことができる存在です。そういう意味でもカギを握っているのです。

以上

一覧へ戻る