2021.3.5

第十七回 脱炭素の気づきにくい側面 ①再生エネの質

日本再生可能エネルギー総合研究所 北村

 脱炭素に向けた、企業や自治体の動きが止まりません。
 例えば、自治体の「ゼロカーボンシティ宣言」(環境省主導)は、3月1日時点で293団体(うち、33都道府県含む)カバーする人口は1億人を超えました。あまりに増えすぎて、宣言団体を現わす表の形式が変わってしまいました。2月中旬には、山梨県と県内の全27市町村が一気にゼロカーボンシティを宣言しています。

 企業の勢いも同様です。ニュースを見ていると、毎日どこかの企業が脱炭素宣言をしています。もはや宣言するのは当たり前で、いつまでにどうやってというところが注目されるようになってきました。
 例えば、達成年度を2050年ではなく、2040年やもっと早くするのがひとつ。それから、脱炭素のために利活用する「再生エネの質」を考えるという企業も現れてきています。

 再生エネの質とは何でしょうか。
 日本で最初に「RE100」に参加したリコーは、取り入れる再生エネに対して「独自の評価制度」の導入を決めました。その理由はというと、例えば、海外のリコーの顧客が、再生エネがどうやって作られたものであるかを、将来、気にする可能性があると考えているからです。具体的には、再生エネへの投資を促すために、「運転開始からの機関が短い再生エネ発電施設」の評価を高くするとか、「ヤシ殻を輸入してくるバイオマス発電」は点数を低くするというようなものです。
 地域新電力から見て重要なのは、次のようなケースです。
 「再生エネの発電所に地元の自治体や企業の出資比率が高い」と、点数が高くなるといった評価です。地域に雇用など経済的な貢献をする施設が高い評価を受けるのです。地域貢献と再生エネを結び付ける、まさに『再生エネの質』を問う重要ポイントです。

 もう一つ例を見てみましょう。
 こちらも「RE100」に参加している企業の富士通です。富士通は、独自に「再生可能エネルギー調達原則」というものを決めています。これがなかなか良くできているものなのです。
 必須要件と推奨要件があるのですが、推奨要件では、まず、「地域社会に貢献できるような再エネ電源を選択すること」とあります。
 具体的には、「例えば、使用する電力の再エネ電源を立地する地域の電力網から選択することにより、電力の地産地消を可能とする」と示し、エネルギーの地産地消を勧めています。また、「あるいは、再エネ電力の拡大に努めている発電事業者を支援する」と書かれ、まさしく、再生エネの利活用を進める地域新電力とのコラボが掲げられています。素晴らしいと思いませんか。
 もうひとつ、地域へのインパクトを重要視している点が見られます。
 「地域が賛同して開発・建設した発電設備であること」、「発電設備のある地域に著しい環境影響を与えていないこと」を、はっきり盛り込んでいるのです。
 これは、近年問題になっている、例えば、乱開発によるメガソーラーを排除しようという姿勢です。これに関しては、各地の自治体で環境破壊や災害の危険防止の観点から反対されるケースが増えていて、少なくない自治体が条例などを制定して規制を始めています。ただ、再生エネであればよいという姿勢が、評価されなくなってきているだけではなく、そこでできた電気も使われない時代がきているのです。
 もちろん、地域を守る立場である地域新電力にとっても望ましい重要なポイントです。再生エネ(電力)を使う側、欲する側がこのような毅然とした姿勢を取ることは、地域のサポートにもなりますし、地域側からのコラボ相手の良き選択肢の提供にもつながる動きだといえるでしょう。

 脱炭素時代は、地域にとって大きなチャンスでもあります。
 利益だけを目指した事業者が地域に殺到した初期のFIT時代を経て、いまや再生エネの質が問われる時代に入りました。地域もしっかりこれを受け止めて、何が本当に地域に役立つのかを見極めて、活動してもらいたいと考えます。

以上

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