2020.7.1

第一回 コラム「新電力通信」スタート

日本再生可能エネルギー総合研究所 北村

 いよいよ、新しいコラムが始まります。
 基本的には継続に近いのですが、ひとつの区切りとして気持ちを新たにして取り組みたいと考えています。よろしくお願いします。

 この数年の間に、新電力という名前はすっかり定着しました。新コラムのタイトルである「新電力通信」も何年か前であれば、新電力から説明をしなければならなかったでしょう。とはいえ、直接、新電力事業にタッチしていない人たちの中では、いまだに意味がクリアだとは言えず、混同している人も残っているのも事実です。新電力、イコール小売電気事業者ではなく、発電事業者とごっちゃに理解しているケースも散見されます。これを機会に、もう一度、新電力の機能と役割をおさらいしておくのも悪くはありません。
 小売電気事業者をひと世代前の申請だけだったPPSと同じ文脈で使うこともさすがにやめましょう。知識がないと思われます。kWとkWhの区別ができていないのに似た失敗となります。

 もうひとつ、確認しておいた方が良いと私が思うことがあります。
 新電力=小売電気事業者、は間違いない事実ですが、新電力の役割が電気を小売りするだけだと決めつけないことです。あれれ、なんだか筆者の言っていることが矛盾していないかと思うかもしれませんが、ここは肝心なところです。よく聞いていてください。確かにエネ庁に登録するのは電気の小売りの機能で、電気を売ってよいというお墨付きをもらうのです。
 しかし、今、新電力は、そうですね、このコラムで主として扱うのが地域新電力なので、地域新電力は、と言い換えておきましょう。地域新電力は、小売りのためだけに存在するわけではなくなっています。それ以外に多くの役割が期待されてきているのです。そして、小売り以外の役割の重要性が増してきているのです。そこを理解しておかないと、地域新電力というビジネスの一端しか知ることなく、小売り事業という厳しい戦(いくさ)だけにこだわって、「安売り」という心もとない武器だけで闘い、疲弊していくことにもなりかねません。
 このコラムでは、地域新電力の前に広がる積極的な新しいフィールドをより具体的で、実態に即した例を示しながら解説していくことにも注力する予定です。
 それは、圧倒的に再生エネに関連した役割です。例えば、再生エネ拡大の取り組みに必ず登場してくる新しいエネルギー用語の「PPA」や「VPP」のような流行りのシステムです。いかに再生エネの発電施設を拡大し、その電力を無駄なく利用することに資する仕組みですが、その重要なポイントで新電力の存在が効いてくるのです。いわゆる「柔軟性」や「アグリゲーター」は新電力の持つ機能の一つと考えてください。
 また、話題となっている再生エネの利用促進の協議体「RE100」や「RE Action」、今年になって参加自治体が3倍になり100に達した「2050年二酸化炭素排出実質ゼロ宣言」などの実現に貢献できる能力を地域新電力は持っています。地域の中で再生エネをうまく使うための中心的な存在が地域新電力と言い切ってもよいでしょう。

 これまでのコラムでは、このあたりの理屈を何度となく繰り返し主張してきました。ただし、まだ、具体的な実例がそろっていなかったため、感覚としてわかるが現実的なのかと疑問を持っていた方も多かったに違いありません。
 先ほど「2050年二酸化炭素排出実質ゼロ宣言」が急増していること(6月25日現在で101自治体)を示しましたが、自治体は競うように宣言し、一部の自治体はその実現のために自治体新電力を立ち上げる計画が俎上に上っています。また、「再エネ宣言RE Action」の参加団体は69にまで増えています。そして、再生エネ電力の利用を拡大するための方策として、PPA(第三者保有の再生エネ発電施設との契約で電力供給を受けるシステム)が各地で進められています。先ほどお話ししたように、PPAは地域の新電力とたいへん親和性が高いことで知られています。
 新しいコラムでは、これらの具体的な取り組みも適宜お伝えしていきます。

 最後に、電力以外の取り組みについても少しだけ書いておきます。
 新電力という言葉には「電力」が入っていますが、私は、新電力という名のエネルギー会社だと思っています。エネルギーのセンターにいるのは確かに再生エネですが、再生エネへの転換の主流は、ボリュームでいうと電気ではありません。最終エネルギー利用形態は、熱が最も多く、次いで交通、3番目が電気なのです。
 最近では、自動運転やシェアリングからの視点で、再生エネを利用した交通システムの実証が各地で行われています。また再生エネ由来の熱利用もトレンド化しつつあります。
 地域のエネルギー会社として積極的にこれらに関わっている新電力のご紹介にもコラムの文面を割いていくことになります。長いお付き合いをお願いします。

以上

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